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砂丘に残っていたのは、私たちだけでした。たくさんの人たちの古い足跡は、時間方向に圧縮されていくにつれて原形を留めなくなっていきます。私たちの新しい足跡は、いつまでここに残るのでしょうか。私たちがここにいたことを、誰かが忘れずにいてくれるでしょうか。
足跡だけではありません。この地下にはたくさんの不発弾が埋まっていて、それと同じくらいたくさんの死体が埋まっています。少しずつ砂と一体化して、最後には足跡と一緒に消えてしまうのです。だから、南口に近いこのエリアは全体が立ち入り禁止になっていたし、そもそも北エリアで綺麗なバッシリアが咲いているのにここに忍び込もうとする人は私たちの他にいません。
どうして植物が育たないのか分かる?と、石神さんが地面を指差しました。花壇として区切られたであろう「235区-667」と名付けられた柵の中には、植物の名前が印刷された小さな札が何本か立てられています。きっと、芽さえ出ないまま放置されてしまったのでしょう。
砂の中から何本か色の悪い茎が飛び出ていますが、ところどころ塗装が落ちてもはやシルクフラワーであることを隠し切れていません。ぼろぼろになったテフゼルの赤い花びらがかろうじて風に揺られて、今にも落ちてしまいそうです。