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私たちが 浸透 と呼ぶ現象は、主にこうした古い ポータル のような姿で目の前に現れます。 浸透 の特徴は大きく分けて3つ。突然に――そう、いつも突然に、通報が来るまで気付かない。古びた姿で――例外なく、老朽化したみすぼらしい状態で。そして、正しい ポータル のふりをする――何人か住人が消えるまで、その場に留まっているのです。
このように場違いな(Out-of-Place)ゲートが各地に現れる原因は、ほとんどが不適切に残された古い ポータル 設定のせいです。つまり、一時的に古い設定を参照した ポータルキャッシュ が設置する無害な ポータル であり、長くても1日くらい放置していればそのまま消えてしまいます。
しかし、問題はその一部に 幽霊ポータル が混ざっているということです。 幽霊ポータル は、PPSの構造上の問題と ポータルキャッシュ の脆弱性を突いて無理やり立ち上げられた、悪意ある ポータル です。 幽霊ポータル を使うと、本来 ポータル の行き先として設定できない場所に移動したり、PPSの管理階層から外れた不正なパラメータを配信できてしまいます。
そもそも、 ポータル というのは空間と空間を繋げるためのゲートのような存在です。都市間の移動はもちろん、同じビル内を移動するエレベーターのような役割も担っています。また、最近では機密エリアと認証装置を空間的に分離するための方策としても一般的になりました。これらの設定をスムーズに行うシステムが、PPSとよばれる階層化設定管理サービスです。
PPSが担うのは、利用したいポータルを特定するための位置解決機能です。 ポータル の開発当初は、1つのポータルはある別のポータルと常に一対一対応していました。つまり、それぞれの位置設定をお互いに書き換えれば事足りたわけです。しかし、軍事利用や商用化が進むにつれ、そのような実験室レベルの構造では運用が難しくなりました。PPSではこれらの設定を階層化し、簡単に取得・変更できるようにしたのです。
しかし、PPSの導入はメリットばかりではありません。前述のように、階層管理ゆえに新しい設定が世界中のサーバに広がるまで時間がかかったり(※PPSゾーンは即座に更新されますが、場合によっては数時間から数日かかることもございます)、運用の不備を突いたハイジャックなどによって 浸透 という現象が起こるのです。数少ない目撃情報によれば、古い ポータル は文字通り浸透するように地面から現れ、ずっと前からそこに立っていたかのように固定化されるといいます。
浸透 によって生まれた不正な ポータル をくぐるとどうなるのか、見た目では分かりません。多くの場合、古いPPSレコードを辿ってどこかの更地や廃墟に飛ばされるはずですが、それが悪意をもって意図的に設置された 幽霊ポータル なら、身の安全は保証できないでしょう。