エメラルドの海
刑部岬の展望台に到着したのは、十一時より少し前のことでした。車を降りると春みたいな夏みたいな曖昧な太陽と、冬みたいな春みたいな冷たい風が我々を出迎えます。大きなジープでくねくねの急勾配を進んだ先に広がるこの数キロメートルの断崖絶壁は、かつて「東洋のドーバー」と呼ばれていたようですが、全てが崩れ落ちた今となっては、たくさんの白い鉱船が停泊している港と、それらを囲む大きな灰色の防波堤しか見えません。
防波堤は太平洋に向かってまっすぐ突き出していて、まるで太平洋をかき混ぜる大きなスターラーのようです。コンクリートの突堤の周りに置かれた真っ黒なテトラポッドに、きらきらと光るエメラルドの結晶が吸い込まれては砕かれていきます。 春の海はエメラルドのしぶきを上げて、よく輝いていました。
大きな結晶はガラスを潰したようなくしゃりという高い音で砕けて、小さな結晶はぷちぷちと弾けながら海の底へと沈んでいきます。沈んだエメラルドの砂が集まって海の底で大きな原石が生まれるというのは、もちろん私も教科書で読んだことがあります。
東洋のスマラカタより